最適化に向かう生きた機械
最適化問題は非常に重要なテーマです。特に非線形で多次元な最適化問題は、世の中に普通にありますが、解くことが難しい問題です。解析的には解けないために、数値計算で解くことになりますが、変数が増えるほど、局所解が増えて、一体どこが最適なのか分からなくなります。最適解だと思っても、後から考えてみると、単なる局所解だったということも普通にあります。解くことが難しい問題でも、少しでも最適解に近づこうと努力しているのが生物達です。もちろん、我々、人間もそうですが、動物ではない植物もある種の最適化機械とみなせるでしょう。
植物は、意志も持たず神経もありません。痛みや苦しみもない代わりに、夢も希望もない訳です。しかし、懸命に生きています。植物の生きている目的はただひとつ、「子孫を残す」ことです。この目的を最大化するために、植物は多くの品種に分化し進化してきました。植物の進化は、未だ、最適化に向かう途中にあります。最適化すればするほど、最適化しなければならないことが増えるといった状態でしょう。昨今の異常気象や化学農薬に対処しなければ、子孫を残すことなどできません。また、美味しい果実を実らせないと、人間からは雑草、雑木扱いを受けて絶滅するかもしれません。また、免疫系がないと雑菌に感染して、すぐに病気になってしまいます。子孫を残すまでは、自分の生命を維持する必要があります。また、生命維持可能な限界で、子孫を残さなければなりません。そのための戦略が必要になります。また、戦略を実現するための戦術も必要です。
植物も、日々、様々な課題を持ち、悩みながらも一歩づつ最適化に向かっています。植物たちが、どのような方法で最適化問題を解いているのかは、非常に興味が尽きないことです。植物の最適化アルゴリズムはDNAに組み込まれています。しかし、DNAをいくら調べても、植物たちの最適化アルゴリズムは見つけることはできません。DNAの広範囲の発現遺伝子が複雑に絡み合って相互作用しているからです。なので、植物たちの最適化アルゴリズムを調べるには、外部から既知の刺激を与えて、その応答を調べる、ブラックボックステストを行わなければなりません。一見、単純そうなブラックボックステストですが、自然界には、非常に多くの変動要因があり、いつも同じ刺激を与えられるとか限らず、得られる応答も、ばらつきを持ったものになります。
室内栽培は、土も使わず、水や養分も安定供給でき、太陽の光も必要ありません。エアコンで室温は安定しますし、害虫も入ってきません。このような環境で、栽培条件の1つだけを変化させて栽培した時にだけ、刺激に対する応答が得られます。株式会社アイティプランツが開発したアイティプランターは、優れた栽培実験装置です。USBデバイスとして機能するので、様々な栽培プログラムを設定することができます。