クロロフィル蛍光

2014年10月19日 - 未分類

クロロフィル蛍光について

植物の光合成を司るクロロフィル(葉緑素)は、余分な光エネルギーを放出するために、蛍光を発します。逆に言えば、蛍光がでているということは、光が強すぎて、光阻害を受けているということです。強い蛍光がでている場合には、LEDの照度を下げたほうが効率が良くなります。また、光阻害で枯らしたりすることもなくなるでしょう。

光合成効率を測定するには、PAM測定を行います。PAM測定では、観察光とフラッシュ光を使って、蛍光の変化を測定します。これは、PAM測定が、屋外などでの測定を想定したものであるからだと思われます。屋外では、太陽光の照度を自由に変更できないので、フラッシュ光で強制的に光飽和させるということでしょう。

アイティプランターでは、 LEDのパワーを変えられるので、蛍光を測定しながら、LEDのパワーを最適化することができそうです。ここでは、夢の光合成最適化システムの構想を記述したいと思います。アイティプランターに光合成最適化システムが実装できれば、植物の品種や季節、室温などに影響されずに、常に、最適な光合成を行わせて、無駄なエネルギーを使わず、最高効率で植物栽培ができるようになります。また、植物に関する理解も深まると思います。

クロロフィル蛍光の測定方法

基本的には、紫外領域(350nm)の光をあてると、長波長側に蛍光が現れます。蛍光が現れる波長と、その変化から光合成の状況を推定することになります。

F440 は440nmの波長の応答であり、F690は690nmの波長の応答です。それぞれの波長の応答の比は以下の様な項目を表現しているという報告があります。

F440/F690 F440/F740 F690/F740 F440/F520
葉の状態
斑入りvs緑葉  ++  ++  ++  0
裏面vs表面  ++  ++  ++  0
黄葉vs緑葉  +  ++  ++  ++
2次展葉vs1次展葉  —  —  ++  –
ストレスと負荷
水欠乏  ++  ++  0  0
窒素欠乏  ++  ++  ++  0
直達日射  ++  ++  +  —
ダニの攻撃  ++  ++  0  +
光合成阻害処理
熱処理  —  —  0  —
紫外線(UV-A)処理  —  —  —  0
除草剤処理  —  —  +  0
強光阻害 ++  ++  —  0

+ 蛍光強度比が正に応答する

–  蛍光強度比が負に応答する

0 応答しない

これは、すごいですね。蛍光応答から、水が不足しているとか、養分が不足しているとか、ダニにやられているとかまで分かるようです。もちろん、この報告をそのまま鵜呑みにはできないので、実際に実験をする必要があります。

問題は、蛍光の測定方法です。蛍光は微弱なので、どのようにして測定するか、考えなければなりません。マイクロ分光計C12666MAを使うのが良さそうですが、どのようにして集光するかが問題です。

 

光阻害と生長

植物は、強い光を当てても、生長が早まらず、生長曲線は飽和することが知られています。アイティプランターで実験をすることもできます。本来ならば、光強度に比例して、生長が早まってもいいはずですが、そうはなりません。この理由は、光阻害に関係しているのではないかと思います。

光阻害

補償点は、植物が呼吸などの生命活動で消費するエネルギーと光合成で得るエネルギーがバランスする点です。補償点以下では赤字になり、やがて植物は枯れてしまいます。補償点から、しばらくは光量に比例して、直線的に生長が高まります。しかし、ある一定量の光以上は、生長が飽和します。では、余分な光エネルギーは、どうなるのでしょうか? 光合成に使われない光エネルギーは、植物の中で浪費されます。また、紫外線や熱(赤外線)として放出されます。いずれも、エネルギーの無駄使いに他なりません。最適制御領域で、効率よく栽培したいものです。

 

 

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