光阻害って何?

2014年10月6日 - 未分類

青空のもと、強烈な太陽の光を受けて、元気に育ったって言うと、美味しそうな野菜ができるような気がしますよね。苗も、発芽した直後から、強烈な光を浴びたほうが、丈夫な苗が早く育ちそうに思いませんか? 特に、四季成りイチゴ(エラン)とかの苗は、非常に小さな時期が長く続きます。苗に強い光を当てて、早く育たないか実験してみました。

背低アイティプランターで苗栽培実験

150mmの支柱にした背低アイティプランターを作ります。15Φのアクリルパイプを15cmに切って、両端にホットメルトでM4ナットを埋め込みます。支柱は3本作ります。

背低キット

 

作成した支柱を使ってアイティプランターを組み立てます。高さ210mm(標準高さ 325mmの65%)、栽培面の照度は3倍になります。苗カバーを取れば、苗ポットが25個入るので、25株の苗が栽培できます。

 

積み重ねると親子プランターになります。

 

2週間程栽培した結果は、悲惨なものでした。

1週間目  早くも枯れた苗が出始めています。

2週間目 25株中、13株も枯れてしまいました。恐らく強光による光阻害が発生したのではないかと思います。

光阻害について

光阻害とは、一般には「可視光により引き起こされる、色素崩壊とは無関係な、光合成能力の低下」と定義されています。植物は、強い光のもとでは、余分に作りすぎたエネルギーを放出しようとしますが、限界を超えると光合成の装置が壊れてしまうようです。
要点
  1. 光は植物にとって欠くことのできない資源である一方、そのエネルギー故に光合成器官に損傷を与える。(Osmond et al. 1997; Osmond 1994; Chow et al. 2005; Demmig-Adams & Adams 2006)
  2. 葉が受けた光エネルギーのうち光合成や熱放散などで消費しきれない過剰な光エネルギーがダメージを引き起こすとし、Excess energy仮説と呼ばれる(Ogren et al. 1984, Vass et al. 1992)
  3. 光化学系IIの酸素発生系に存在するマンガンが光によって励起されることで遊離し、酸素発生系が機能を失った状態で、光化学系IIの反応中心が励起されることがダメージを引き起こすというもので、Two-step仮説と呼ばれる(Hakala et al. 2005, Ohnishi et al. 2005)

過剰エネルギーがほとんどない弱光や中光でも光阻害は起きており、two-stepメカニズムとExcess energyは同時に進行していいる。

活性のある光化学系IIは光化学系Iへと電子を渡す役割があるが、この電子の流れにより光化学系Iの酸化還元状態が変化すると葉の吸光スペクトルが変化する。この変化は820nmというクロロフィルなどの色素によってほとんど吸収されない波長においても見られるため、測定光は葉全体に行き渡り、全組織的な測定を行うことが可能である(1-2: Pasquale et al. 2008)。また、光合成は、クロロフィル蛍光画像解析で測定可能である。355nmの光を当てて、700nmあたりの蛍光量を測定することでも測定できる。

早稲田大学のサイトで、上手く説明されていました。

なぜ強すぎる光は光合成によくないのか?

光合成には光を使う反応(チラコイド膜で起こります)と光を使わない反応(チラコイド膜で起こる反応の一部とストロマで起こる反応)があります。光のエネルギーを使う反応は、当然、光を強くしていくと速度が上がりますが、光を使わない反応の速度は温度などの条件が一定なら一定だと考えてよいでしょう。暗いところでは、光を使う反応速度が0で、光が弱い時には光を使う反応が全体の光合成の速度を決めます(これを光を使う速度が全体を「律速」しているといいます)。光が強くなっていくと、最初は光合成全体の速度が上がりますが、全体の速度は光を使わない反応を超えることはありません。ある程度以上の光の強さになると、光を使わない反応の速度が全体の光合成の速度の律速になるので、それ以上は光合成の速度が上がらなくなります。

それでは、その時に、強くした分の光のエネルギーはどこへ行くのでしょうか。普通、光のエネルギーは光合成の反応を進めるエネルギーとして使われますが、強い光の場合、もう光合成はそれ以上は上がらないので、余分な光のエネルギーは光合成に使うことはできません。そのような場合、植物には防御システムがあって、ある程度までは、エネルギーを安全に熱エネルギーの形にすることができます。しかし、さらに光が強くなると、エネルギーが余ってそのエネルギーによって光合成の装置が壊されてしまうことがあります。これを「光阻害」といって、強すぎる光で光合成が行なわれなくなる原因です。具体的には、余った光エネルギーによって「活性酸素」と呼ばれる反応性の高い物質が発生し、それが光合成装置を破壊します。

感想

そう言えば、以前、台湾の会社から借りた植物栽培用LEDで、次々に苗が枯れていったことがありました。その時には、LEDの波長の混合に問題があるのかと思っていました。台湾の会社では、問題なく育つとの事だったので不思議に思っていました。今から思えば、これも光量の問題でした。LEDのパワーが強すぎるために起こっていたのだろうと思います。もっと、距離を離すか、LEDのパワーを弱めるべきでした。

四季成りイチゴでは実験では強光阻害を受けて枯れてしまいましたが、強い光でも育つような品種を探してみたり、アイティプランターのLEDライトの光量を上手に調整することで光阻害を防ぐ、といった実験ができると思います。

それにしても、LEDの光強度は、アイティプランターのもので十分であることが分かりました。これ以上、LEDパワーを強めても、消費電力が上がり、植物は光阻害を受ける、という、良いことがない状態になります。アイティプランターの設計の良さが証明されたような実験とも言えるのではないかと思います。

屋外の太陽光で育つ植物たちも、太陽の光が強すぎると、余った光エネルギーの浪費に懸命なようですね。

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