植物は、何時、水を吸うのでしょうか?

2013年12月21日 - 栽培実験

植物は、何時、水を吸うのでしょうか?

image_04_01_01農家やガーデニングをしている人達は、朝に水をやるのがよいと経験的に知っています。では、午後から水をやっても植物に吸収されないのでしょうか?また、植物の種類によっても違いがあるのでしょうか?

夏場の午後には「植物は昼寝する」、と言われています。中学の理科では、植物の昼寝現象の原因について、気温の上昇と湿度の下降により蒸散量が吸水量より多くなり、葉に含まれている水分量が減少するため気孔が閉じる。このことより蒸散作用が抑制され、二酸化炭素の供給も減少するため、光合成の活動が低下する、ことが原因と説明されています。昼寝中は光合成も行っておらず、水を与えても吸収しなくなります。

これは屋外の露地栽培の例ですが、空調の施された室内ではどうなるでしょうか?室内でも、植物は昼寝現象を起こすのでしょうか。温度や湿度が一定ならば、蒸散も変化ないはずです。しかし、植物は、強い光を受けると光合成による糖の合成が促進され、葉の中に貯まってしまい、葉の細胞の浸透圧が高まり、葉緑素の光合成機能を抑制することがあります。強い光を受けなければ、植物は昼寝をせず、光合成を続けることができます。空調の施された室内では、温度や湿度による蒸散作用の変化よりも、むしろ、光合成の速度と転流の速度に関係がありそうです。

光合成は、空気中の二酸化炭素と水から糖を合成し酸素を放出する活動です。植物が水を吸わなければ光合成はできないはずです。つまり、植物の吸水は光合成と関係していると考えられます。しかし、葉の気孔からの蒸散により水分が植物から奪われる為に、必ずしも、水分量と光合成量とは比例しないと言われています。環境温度や湿度が一定であるとすると気孔は光が当たると開きます。つまり、光が当たると蒸散分を補うように吸水すると考えられます。

路地栽培では太陽の光で光合成しているので光量の調整は困難であり、また、太陽光により葉の温度が上昇し、また、空気中の湿度も大きく変化するので原因の特定が困難ですが、アイティプランターでは、温度や湿度が一定の室内で、自由に光量の制御ができます。また、水やりのタイミングも制御できるために、特定のパラメータだけを変化させることが可能です。

アイティプランターは複数のセンサーを内蔵していますが、内蔵しているセンサーの1つに水位センサーがあります。養液槽の水量を計測するための非接触型センサーです。455kHzのパルスで、水分量に比例する水分のインピーダンスの変化を測定できます。この水位センサーを植物に取り付けることで植物の吸水量の変化を測定できないか試してみたので報告いたします。

水位センサーによる吸水活動の測定

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1.アイティプランターの水位センサーから配線2本を切断する。配線2本に極性はありません。
2.1本の線にはディスポ電極(心電図の測定に使うものです)を、他の1本にはアルミ箔を取り付けます。
3.アルミ箔を植物の茎に巻きつけます。

4.巻きつけたアルミ箔に最も近いところにある葉の裏側にディスポ電極を取り付けます。

5.アイティプランターで自動計測を行います。

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アイティプランターは水気栽培法を採用しています。ポンプは1分だけ動作して、約2リットルの養液を植物の根に与えて停止します。根に与えられた養液は、栽培トレイの底部に開けた穴から約5分で流れ落ちます。根は養液に浸かっている間に急激に吸水します。また、養液が流れ落ちた後は、養液で濡れた状態になり、空気中の酸素を吸収します。

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植物に電極を取付け

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測定結果:赤丸の時点でポンプを駆動して水を与える。

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途中で水を与えた結果。ほとんど吸水していない。
測定結果を見ると、ポンプによる給水直後が植物の給水量も最大になっています。その後、約12時間をかけて、元の水量に戻ります。この間、光を照射した状態で、ポンプで養液を与えても、ほとんど給水されません。恐らく、植物の昼寝の状態に入っているものと考えられます。
昼寝現象の仮説

1.植物が乾いている時に光を当てて水を与える。浸透圧が低く、また、光で気孔が開いているので水を吸い上げる。
2.水と光が揃った時点で光合成が活発化する。
3.葉緑体の中に糖分が生成され、茎、幹、根に転流する。
4.糖の合成速度は転流速度より速いため、葉に糖分が蓄積する。
5.葉に糖分が蓄積すると、葉の細胞の浸透圧が高まり、水を吸い上げられなくなる。
6.水を吸い上げられなくなると、葉の水分が不足して光合成ができなくなる。
7.転流が完了して葉の糖分が少なくなると、また、吸水できるようになる。
昼寝現象の打破の方法 その1
植物が昼寝する前に光の照射を止める方法。

1.  水を与える前に光を与えると光合成できないので、光を照射する前に水を与える。
2.  水を与えたら素早く吸収されるので30分後から光を与える。
3.  吸水量が減少してきたら、一端、光の照射を止める。
4.  1時間後に水を与えて吸水させる。
5.  吸水量が増加してきたら、吸水30分後に光を照射する。
6.  これを繰り返すのが、最も光合成効率を高める栽培方法になる?

実験1
1.  朝4時にポンプで養液を与える。

2.  4:30からLEDライトをONにして光を照射。

3.  12時にライトをOFFにして、13時にポンプで養液を与える。

4.  14:30にLEDライトをONにして光を照射。

5.  1日10時間照射したらライトをOFFにする。

6.  LEDライトをOFFにしない場合と比較して、OFFにした場合では吸水量が増えていることを確認する。

光合成の効率
強い光を受けて昼寝している場合と、適正な光量を受けている場合とでは、光合成の効率に違いがあるのでしょうか?どちらが効率が良いのでしょうか?
昼寝現象の打破の方法 その2

  1. パルス光で光を照射する方法。

では、LEDをパルス点灯すれば、LEDがOFFの時には光が照射されません。この間には光合成が起こらないので、転流速度の方が大きくなるはずです。適切なパルス周期を設定すれば、昼寝現象を打破できるかもしれません。連続点灯よりもパルス点灯の方が、消費電力が少なく、発熱も抑えられ、電気代も安くなります。LEDの寿命も長くなります。

実験2
1.朝4時にポンプで養液を与える。
2.4:30からLEDライトをONにして光を照射。
3.12時にライトをパルス照射に切り替えて、13時にポンプで養液を与える。
4.1日10時間照射したらライトをOFFにする。
5.LEDライトをパルス照射にしない場合と比較して、パルス照射にした場合では吸水量が増えていることを確認する。
昼寝現象の打破の方法 その3
ハイブリッド法。
パルス光で光を照射するが、吸水量が減少してきたら光照射を止めて吸水させてから、光照射を再開する。
実験3
1.朝4時にポンプで養液を与える。
2.4:30からLEDライトをパルス照射。
3.吸水量が減少してきたらライトをOFFにして13時にポンプで養液を与える。
4.吸水量が回復したらライトをパルス照射し、1日10時間照射したらライトをOFFにする。
5.LEDライトをパルス照射にしない場合と比較して、パルス照射にした場合では吸水量が増えていることを確認する。
さて、どの実験が最も多くの水を吸水する、言い換えれば、最も光合成を活発に行うでしょうか?
また、パルス照射のパルス周期やデューティ比は、どのように関係するのでしょうか?
光合成速度と転流速度の比はパルス周期やデューティ比に関係しているはずです。
また、その関係は、植物の種類によって異なるのでしょうか、それとも植物なら同じなのでしょうか?

この続きは、実験をしてからです。お楽しみに。

 

 

 

 

 

 

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