簡易型ガルバノスキャナの作り方

2019年2月13日 - 未分類

ガルバノスキャナは、レーザー光線を任意の方法に反射する鏡デバイスです。ガルバノモーターと呼ばれる高性能(低イナーシャ、高トルク、高精度リニアリティ、高位置精度、優れた温度特性、湿度の影響が少ない)なモーターに、レーザ用のガルバノミラーを付けたものです。レーザー光線を高速、高精度、広範囲に操作することができます。レーザマーカ、レーザーマーキング装置、レーザ顕微鏡、光造形装置、トリミング・ドリリング等のレーザ加工装置、レーザー距離測定などに使われます。

ガルバノスキャナ A to Z に詳しい説明があります。一般的には、1軸のガルバノスキャナを2つ使って2軸のスキャナを構成します。

 

市販のガルバノスキャナの問題点

1.XスキャンミラーとYスキャンミラーとの間に距離があるために、捜査範囲が狭くなる。

2.非常に高価。特に、精度が高くなるほど高額になります。

安価なガルバノスキャナ

一方で、Projection Ballのように、安価なモーター(マブチモーター)を使ったものがあります。高価なガルバノスキャナと比較して、精度的には劣りますが、手軽に利用できます。この製品のアイデアのポイントは、高精度な磁気エンコーダーを使って、モーターの回転角度をコントロールすることです。他にも、1万円ほどのガルバノスキャナが販売されていますが、アナログ入力のアナログ動作のものです。やっぱりデジタル入力でCPUコントロールしたいところです。

AMS社製磁気エンコーダAS5048A

AMS社製磁気エンコーダAS5048Aを使って、14 bit(16384)/1回転の高分解能、SPI通信を介してサンプリング周期は最大12 kHz、サイズ20 mm x 15 mmと小型なものです。ここで販売されています。今回の試作で、最も高価な部品ですが、1つ1,800円です。性能から見て、コストパフォーマンスは高いのではないかと思われます。

マブチモーターと磁気エンコーダーでガルバノスキャナを構成してしまうとは、全く、恐れ入る素晴らしいアイデアです。しかし、走査範囲があまり広くありません。

広範囲走査型ガルバノスキャナ

そこで、もっと簡易で広範囲走査可能なガルバノスキャナを考えてみました。広範囲走査可能にするには、1軸ガルバノを2つ使うのではなく、2軸ガルバノスキャナにする必要があります。1つのガルバノスキャナで2つのミラーを独立にモーターで回転させます。モーターの回転角度を検出しなければなりません。

先ず、探したのは両軸モーターです。軸の一端に磁気エンコーダーを付けて回転角度を検出し、他端でミラーを回転させます。両軸モーターは、AMAZONにありました。

中華製の何とも怪しいモーターですが、安価なので試作には適しています。最初は、タミヤ グレードアップパーツ GP.487 トルクチューン 2モーターPRO 15487 を使ったのですが、このタイプのモーターは、低電圧では回転せず、急に高速回転になるものだったので、ガルバノスキャナには使えませんでした。

中華製モーターは、安いだけあってモーターの特性とかは一切不明です。振動モーターの重りは、ペンチで引っこ抜きます。

構成は、3DCADで設計します。振動モーターの側面にミラーを貼り付けて、レーザーの反射面にします。振動モーター自体が回転することでミラーの角度が変わります。振動モーターには、リング状のネオジ磁石(面内磁化)をはめ込んであります。このネオジ磁石が振動モーターと一緒に回転することで磁場が変化して、磁気エンコーダーで角度が検出できます。振動モータを取り付けるフレームや両軸モーターを取り付けるフレームは、今回、3Dプリンターで作りましたが、アルミ板を曲げて作ることもできます。

モーターで鏡を回転させるのではなく、モーター本体を回転させるというアイデアは素晴らしいと思います。また、偶然ですが、リング状のネオジ磁石も、振動モーターにピッタリでした。

磁気エンコーダー2つの回転角を読み込んで、2つのモーターの回転角度を制御します。制御には、ESP32を使いました。

 

安価ですが、WiFiやBLTが付いています。モータードライバーも必要です。2つのモーターを正逆回転させなければなりません。ちょうどいいものがありました。

DRV8835のArdinoスケッチがあるので、簡単に使えます。但し、ESP32には、analogWrite命令がないので、ledcWrite命令に書き換えます。

モーターはPID制御をします。PIDのパラメータの調整も必要です。そこで、ESP32でWiFiにつなげて、httpサーバーを起動しました。

ブラウザの画面で、モーターの回転角度やレーザー強度、PIDパラメータが入力できます。

実際の試作品の写真です。白いアクリル板の下にESP32が付いています。

レーザーはDRV777でPWMして光量調整しています。

試作結果ですが、120度もの広範囲にレーザーを走査することができました。しかし、問題もあります。特に振動モーターの方が、小さな電圧では回転せず、ある程度電圧が高くなると、急に回転しだします。この非線形なヒステリシスがあるために、PID制御が難しく、どうしても小さな振動が発生しました。下のムービーは、円を描いているものですが、横方向の振動が目立ちます。

 

 

振動モーターを、もっと高性能なモーターに交換する必要があります。マブチモーターを使いたいところですが、適当な大きさで両軸のものが見つかりませんでした。X軸の位置決めが振動するという問題が解決できていませんが、非常にシンプルな構成であり、かつ、組立も容易なシンプルな2軸ガルバノスキャナが試作できました。

 

このミニモーターが両軸だったらよかったのですが。一先ず、この試作は、もっといい両軸の小型モーターが入手できるまで、一旦、中断することにします。ちなみに制作費用は、8,000円ほどだと思います。

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