植物発電

2016年5月12日 - 未分類

驚いたことに、植物から電気が取り出せます。皆さんは、ご存知だったでしょうか? 燃料電池みたいな仕組みです。すでに、オランダでは、植物から電気を作って夜間のLED照明に使っています。水田がソーラーパネルのようになる時代が来るかもしれませんね。

ここでは、植物発電の仕組を説明したいと思います。

先ず、大まかには、エネファームや水素電池のような燃料電池、微生物で発電する燃料電池は、原理的に同じようなものだと思ってください。

何らかのエネルギーで、プロトン(H+:水素イオン)が発生します。プロトンは、酸素分子(O2)と結合して、水(H2O)になります。この時、電子を放出します。この電子を集めれば、電気として使えるという訳です。

では、どこからプロトンが発生するのでしょうか? もちろん、植物も体内での光合成で、プロトンを作っています。プロトンは、水を分解することで生成できます。でも、水を分解するにはエネルギーが必要です。光合成は、プロトンの生成に光のエネルギーを使っています。プロトンの生成は、光合成のための第一歩なのです。しかし、プロトンは、非常に強力な酸化作用があるので危険物質でもあります。植物は、生成しすぎたプロトンを無駄遣いして、自分の体を守る仕組みも持っています。この仕組みがないと、強い太陽の光を浴びると枯れてしまいます。それほどに、太陽エネルギーは強力なのです。

プロトンを生成するのは、光合成だけではありません。微生物にも、プロトンを発生できる奴がいます。微生物のエネルギーは有機物です。有機物を分解してエネルギーを得るとともに、有機物分解時に発生するプロトンを放出します。そのプロトンを酸素と反応させて電気ができるという訳です。

では、植物が発電する訳ではないじゃないか、って思いますよね。実は、植物は、根から有機物を放出して微生物に与えているそうです。光合成で稼いだ分の20%から30%ほどを根から出しているそうです。気前のいい太っ腹ですねぇ。そのお陰で、根の周りには微生物がぎっしりと張り付いたバイオフィルムを形成します。このバイオフィルムの中で様々なドラマが展開されるという訳です。無数に存在する微生物の中には、酸素がなくなって呼吸ができなくなっても、なんとかしてしまう奴らがいます。電極呼吸とも呼ばれる方法で呼吸をして増殖します。そんな細菌が普通に存在するのです。どこにでもいる細菌です。呼吸とは、有機物を分解してプロトンを放出することでエネルギーを得る行為と言えます。プロトンを放出できないと窒息して死んでしまいます。プロトンの放出には酸素が必要です。なので、人間でも酸素がないと呼吸ができず、死んでしまうというわけです。息をすることで、発生するプロトンを何とか処理できれば、酸素がなくても生きていけるはずです。酸素以外の何かで、プロトンを中和すればいいのです。どんな方法があるのかは知りませんが。

そんな訳で、オランダのPlant-e社の説明を見てみましょう。

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太陽の光で植物が光合成して有機物(糖とか)を作ります。それを根から放出します。その糖を微生物が分解してプロトンを出します。そのプロトンは、プロトン交換膜を超えて、酸素と結合します。この時に電子が発生します。その電子が電気として使えるという訳です。

プロトン交換膜では、酸素とプロトンの反応がよくなる白金触媒があると効率が高まります。プロトン交換膜や白金触媒がなくても電気が発生しますが、発生量が小さくなります。下の頭にあるように、水田での発電には、プロトン交換膜がなくても、空気中の酸素と反応させることができます。アノード(陰極)を根っこ付近に配置して、カソード(陽極)を水面に浮かべておけばいいのです。空気中には、水中よりも遥かに多くの酸素があるので、プロトンを還元することは容易なのでしょう。

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通常の燃料電池で重要な要素は、プロトン交換膜だと言っても過言ではないでしょう。効率のよい燃料電池を作るには、非常に重要な要素です。長持ちして、安価なプロトン交換膜が必要です。なかなか難しそうですよね。しかし、効率が悪くても、規模が大きければ、同じような量の電気が作れます。試算では、植物発電で、消費電力の半分くらいは作れそうだそうです。

電極を地面に埋めておいて、植物が育つだけで、電気代が半額になるというのは、ちょっと魅力的ですよね。

実は、植物からの有機物でなくても発電できるのです。有機物のゴミ、つまり生ごみから電気が作れます。発電の原理は、まったく同じです。電極呼吸できる微生物の仕事なので、酸素が欠乏した状況にしなければなりません。酸素があると、微生物は普通の呼吸をしていまい、プロトンを放出しません。微生物の周辺は酸素欠乏状態で、電気が発生する付近は酸素が必要なのです。

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酸素欠乏状態は、意外に簡単にできるようです。高温下の水の酸素濃度は低くなります。水中では酸欠状態になりやすいのです。酸素がない環境では、酸素呼吸している微生物は死滅して、無酸素でも電極呼吸できる微生物だけが繁殖します。自動的に、発電によい方向に進行するわkです。しかし、有機物がなくなると電極呼吸する微生物も死滅します。なので、バイオマスなどの有機物を投入する必要があるわけです。植物は、このバイオマスを光合成で作りだして、微生物に与えている訳です。

有機物と微生物がやっていることを省けば、燃料電池になります。燃料電池には微生物は必要ありませんし、有機物も不要です。水素から直接、プロトンを発生させます。なので、水素電池なのです。どこかで、水素を調達しなければなりませんね。

現在のところ、植物発電は、まだまだ先の技術のようです。今後の進展が楽しみでですね。

アイティプランターでも、根からでた有機物が養液に蓄積するので、養液の交換をしないと一般細菌が繁殖します。その細菌の中には、電極呼吸できる奴らもいるはずです。アイティプランターの養液から発電した電気で、LEDライトを点灯できれば、素晴らしいですね。永久機関みたいで、実現は不可能に思えますが。

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